メタンハイドレートは実用化されるのか

(2015年ごろに誰かの手紙に返答したのを見付けたので、すこし校正して転載しておきます)

記事を読んでくれてありがとう。メタンハイドレートは最近新聞などでもよく目にするようになりましたね。原発の事故もあって、日本の近くでエネルギー資源が手に入るようになると良いと思います。

しかし、いろんな技術的な問題があり、メタンハイドレートが本格的な代替エネルギーとして利用できるようになるのは、まだ10年以上はかかるのではないか、と私は考えています。 日本国内の一日の石油消費量は7億リットル、学校のプール2000杯分を毎日輸入しています。そのうちプラスチック等の製品に使われるのは2割程度なので、ほとんどが燃料となっています。日本人一人一人が毎日5リットルの石油を燃やしている換算です。これをメタンハイドレートからのメタンに置きかえるためには、毎日膨大な量を絶え間なく海底から取り出す必要があります。

一番大きな問題は、メタンハイドレートが、深い海の底の地中に存在する固体だということです。石油やガスであれば、ストローのように長い管を突きさせば、それ自身の圧力によって、自然にとりだすことができます。(そのせいでメキシコ湾での原油流出事故のようなことも起こるわけですが)また、浅い海の表面近くにあれば、海をせきとめ、直接掘りに行くこともできるでしょう。(日本では、軍艦島という海底炭鉱がありました)しかし、どちらの方法もメタンハイドレートでは応用できません。海底の地中にあるメタンハイドレートから、どうやってメタンを連続的に取り出すか、という問題がまだ解決していないのです。

とはいえ、海底での分解を早める方法はいろいろ考えられます。塩を氷にかけると氷が融けるのと同じ原理で、分解を早める物質を注入する、圧力をさげて分解しやすくする、温度を上げる、などなど。実際にどれが現場で使えるのかはわかりませんが、いろんなアイデアが提案されていますので、いずれは解決するでしょう。

私自身は、この問題の最良の解決法は、代替エネルギー源をさがすことではなく、日本全体のエネルギー輸入と消費を減らすことだと考えます。石油の代わりにメタンを採掘しても、100年もすればまた枯渇してしまうでしょう。地中から資源を掘り出して使い続ける代わりに、太陽からのエネルギーを最大限に利用し、エネルギー生産量にみあった量を消費する、バランスのとれた産業と生活を目指すのが、理想だと思います。

雑記 2015-12 メタンハイドレート

Linked from


Edit