水の異常な性質
Martin Chaplinのサイトより抄訳。 http://www1.lsbu.ac.uk/water/water_anomalies.html
この分類では、水に混じりものが含まれるケースは除外されている。
相の異常
- 融点が異常に高い。A
- 沸点が異常に高い。A
- 臨界点が異常に高い。A
- 結晶および非晶質の氷の種類が異常に多い。D
- 氷の熱伝導率、剪断弾性率および横方向音速は圧力の増加と共に減少する。 C
- 液体の水の構造は高圧で変化する。 C
- 過冷却水には二つの状態がある。C
- 液体の水を過冷却するのは容易だが、ガラス化するのは困難。 C
- 非常に低い温度で液体の水が存在し、それは加熱すると凍る。E
- 液体の水は容易に過熱する。A
- お湯は冷たい水より速く凍る? (Mpemba現象)
- 暖かい水は冷たい水よりも長時間振動する。 C
- 水分子は温度が上昇すると収縮し、圧力が上昇すると膨張する。 D
密度の異常
- 極低温の氷は加熱すると縮む。E 氷の負の熱膨張率の起源
- 水は融けると収縮する。 D
- 圧力を加えると氷の融点が下がる。D
- 過冷却〜融点よりすこし上の温度の水は加熱すると縮む。C
- 水面はバルクの水よりも密度が高い。 C
- 圧力を加えると密度極大の温度(大気圧では約4℃)が下がる。 C
- 過冷却水の密度には最小値がある。 C
- 水は熱膨張率が低い。 C
- 水の熱膨張率は、低温では次第に減少し、やがて負になる。C
- 水の熱膨張率は圧力の増加とともに増加します。 C
- 最近接分子数は融解すると増加する。 D
- 最近接分子数は温度とともに増加する。C
- 常温の水の圧縮率は異常に低い。
- 温度が上昇するにつれて圧縮率は低下する。 (46.5℃まで)C
- 圧縮率 - 温度の関係に最大値がある。 C
- 温度が上昇するにつれて音速は増加する。 (74°Cまで)C
- 音速が最小になることがある。 C
- 高い周波数の「第二音速」があり、高圧では不連続性を示す。
- 核磁気共鳴のスピン - 格子緩和時間は低温では非常に短い。
- 核磁気共鳴シフトは低温(過冷却)で最大値をとる。
- 水の屈折率は0℃直下で最大値をとる。
- 液体が気体に変わるときの体積の変化は非常に大きい。
物質としての異常
- 水溶液は理想溶液ではない。 E
- 重水(D2O)および三重水(T2O)の物理的性質はH2Oと著しく異なる。 B
- 重水(D2O)および三重水(T2O)の液体は相挙動がH2Oと著しく異なる。B
- 重水(D2O)および三重水(T2O)の氷は量子挙動がH2Oと著しく異なる。 B
- 水の水素原子の平均運動エネルギーは低温で増加する?
- 溶質は密度や粘度などの特性にさまざまな影響を及す。C
- 非極性ガスの水への溶解度は、温度とともに最小値まで減少してから上昇する。C
- 水と氷の誘電率は高い。E
- 比誘電率が最大になる温度がある。
- 比誘電率は、温度が60°Cのときに屈曲する。
- 誘電率の虚数部は20 K付近で最小を示す。
- プロトンおよび水酸化物イオンの移動度は電場中で異常に速い。 B
- 水の導電率は約230℃で最大。
- 水の電気伝導度は周波数とともに上昇する。
- 弱酸の酸性度定数はある温度で最小になる。B
- X線回折は異常に詳細な構造を示す。
- 高圧下では、圧力が増すにつれて分子間距離はむしろ遠くなる。D
- 水の吸着によって負の電気抵抗を示す物質がある。
熱力学的異常
- 水の融解熱は、–17℃で最大。 C
- 水の比熱は氷や蒸気の2倍以上。C
- 水の(定圧・定積)比熱容量は異常に高い。C
- 定圧比熱容量は36℃で最小となる。C
- 定圧比熱容量は、約–45℃で最大となる。C
- 定圧比熱容量は圧力に関して最小値をとる。C
- 定積熱容量(CV)は極大を持つ。 C
- 蒸発熱が大きい。A
- 昇華熱が大きい。 A
- 気化エントロピーが大きい。A
- 水の熱伝導率は高く、約130℃で最大となる。B
水の物理的異常
- 水の粘度は異常に大きい。
- 温度が下がると、粘度とプラントル数が増加する。
- 水の粘度は33°C以下では圧力で減少する。C
- 温度が下がると拡散係数が急激に減少する。C
- 低温では、密度と圧力が増加するにつれて水の自己拡散係数が増加。C
- 熱拡散係数は約0.8 GPaで最大になる。
- 水の表面張力は異常に大きい。A
- 塩の水溶液のなかには、ある塩濃度で表面張力が最小になるものがある。 (Jones-Ray現象)
- 塩が水中の小さな泡の合体を妨げる。
- 塩のモルイオン体積は、温度に関して最大を示す。
松本による分類
- A. 分子量のわりに分子間力が大きいことによる性質。分子そのものの性質。
- B. 水素原子が軽く、水分子が回転しやすいことや水素が脱着しやすいことによる性質。
- C. 過冷却水に2種類の状態があることによる性質。
- D. 水素結合が複雑なネットワーク構造を作れることや、通常の氷の密度が低いことによる性質
- E. A-D以外で、原因がわかっているもの。
- ?. その性質自体が正しいかどうか議論されていて確証されていないもの。