雑記

水素自動車は走りはじめるか

燃料電池自動車や、水素自動車、ITSといった自称「次世代」技術はほんとうに実現するのか。僕は政治的な判断としては(つまり公共事業のひとつとしては)ありだと思うが、技術的経済的観点からはこれらはどれも実現できない、あるいは実現しないほうがよい技術であると思っている。

水素自動車、燃料電池自動車に関しては、水素をどうやって作り、どうやって車にのせるか、という総コストのアセスメントが不十分(というより意図的に避けている?)に見える。また、燃焼反応で得られる熱を捨てる必要がある以上、ほかの方式(たとえば固定型コジェネ+電気自動車)に比べて効率が低いのも明らかである。また、水素という扱いにくい燃料を選ぶことは、安全性を担保するための余計なコストを生むだろう。

ITSに関しても、現状の自動車中心の交通システムは、個々の自動車に自由度が与えられすぎているので、これに情報的な補助を追加しても、はじめから自由度を制限して効率を考えて設計された公共交通サービスの代替にはなりえないと思う。都心が車で渋滞するのは、ITSで解決するのではなく、公共交通機関で解決すべき問題である。自家用車は郊外に適した乗り物で、そこではITSは不要である。

これらのプランは生活習慣病を想起させる。車のある安楽な生活に慣れると、車なしの生活が考えられなくなる。それを維持するためには、自動車を低公害化すればいい、と石油業界、自動車業界は言う。しかし、なんとかして今と同じように車を使い続けよう、という考えから脱却すれば、実は環境負荷を減らす交通のありかたはいくらでもある。水素自動車にしろITSにしろ、現在利権を持つ石油業界、自動車業界が次世代の利益や公共投資を得るために推進している印象が強い。政府がそれをあと押しするのは、どちらも高額納税者だからであって、理想的な将来像を描けるからでは決してない。ハンバーガーを食べすぎて太ったからといって、健康な食生活をとりもどすのに、ハンバーガー屋の勧める健康メニューを選ぶ必要はないのだ。

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