水は迷路を解ける
世間では粘菌が迷路を解く能力を持つ(http://slashdot.jp/science/article.pl?sid=08/10/03/1141225 )ということで大きな話題になっていたりするわけですが、実は私の研究対象である水は、生物ですらないにもかかわらず、迷路を解くことができます。
実験の方法は簡単です。
- まず、マウスに迷路を解かせるのに使うのと同じような、壁で区切られた迷路を準備します。水が溢れないように、入口と出口は一旦ふさぎます。
- スタートには蛇口を、ゴールには排水口を付けます。
- 蛇口からゆっくりと水を出します。
- しばらくすると、水は迷路全体にゆきわたります。
- さらに待つと、余剰な水は排水口から出ていきます。
- 定常的に水が流れるようになった経路が、その迷路の答です。
驚くべきことに、水は、粘菌と同じように、まずすべての経路をくまなく探査し、それから自発的に最も短い経路を見付けだします。経路を可視化したければ、インクを数滴たらしてみると良いでしょう。
え?どういうこと?
粘菌と同じぐらい水もすごい能力を持っているの?と思っていただけると、私もイグノーベル賞をもらえるのですが、事実はそうではありません。実は、迷路を解く問題というのは、難しそうに見えて、実は非常に簡単な問題なのです。
最短経路問題は難しい問題だって聞いたけど、という方もいらっしゃるかもしれません。確かに、ある種の最短経路問題(巡回セールスマン問題など)は非常に難しく、計算科学の最難問に位置付けられます。一方、迷路の解法はこれらとは別種の問題で、非常に簡単な解法がいくつもあります。
- 粘菌が迷路を解けるのは、粘菌がすごい能力を持っているからではなく、迷路を解く問題が簡単だからです。
Cited
https://arxiv.org/pdf/1811.09989.pdf 液体を使った計算に関する概論。(2018)
実証実験
- 粘菌で巡回セールスマン問題を解いて見せてくれれば、本気で賞賛します。