ice dtc

物質の表面は大きくわけて、親水性と撥水性の2種類があります。この違いは、分子レベルでの性質によると考えられています。つまり、ミクロに見たときに親水性分子が表面にあれば、その物質は巨視的にも水になじみやすいと考えられています。

さらに、物理的に表面の立体構造を変えると、親水性や撥水性を高めることができることも知られています。例えば、ハスの葉には撥水性の細かい毛が生えているせいで、ただの平たい表面よりもよく水を弾き、水玉が表面をころがります。

では、親水性分子で撥水性の表面を作ったり、逆に撥水性分子で親水性の表面を作ったりすることはできないのでしょうか。

私たちの研究(MHYMT2017)で、円筒状の穴がたくさんあいた低密度の氷(氷ITT)が、常圧では熱力学的に準安定で、負圧下では安定であるかもしれないということがわかりました。もし、円筒状の穴にちょうどフィットし、水の水素結合ネットワークを乱さないような分子、つまり水をはじく分子を穴のなかに入れておけば、さらに安定にできるかもしれません。

カーボンナノチューブ(CNT)は水をはじくと考えられていますので、CNTを氷ITTの穴の間隔にちょうどあうように一定周期でならべたブラシ(カーボンナノブラシ)をコンピュータ内で作り、計算機シミュレーションで水の中に沈めて、水のなじみやすさを調べました。(YYMT2019)

すると、水はブラシにすみやかになじむだけでなく、通常よりもはるかに高温まで氷のままでいられることがわかりました。生じた氷の構造は、想定していた氷ITTではなく、それによくにた氷dtcでした。

つまり、水をはじく分子であっても、その表面構造をナノスケールで緻密にデザインできたなら、とても水を安定にする(水になじむ)表面を作ることができる、ということをはじめて実証しました。

なお、dtcという名称の由来はよくわかりません。RCSRデータベースでこの形を見付けたものの、文献情報がなく、誰がどういう経緯で命名したのかは不明です。氷dtcは我々が与えたニックネームであり、実験で同定されれば、正式な氷の番号が与えられます。

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ice dtc

References

  1. (YYMT2019)

ice water research 氷dtc GenIce

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