研究テーマ
- Aquomics: A comprehensive Study of Water and Aqueous Solutions
- アクオミクス: 水の網羅的研究
ネットワーク形成性物質である、水やシリコン、シリカを主な研究対象としています。これらの物質は、構成要素(水分子やシリコン原子)が極めてシンプルであるにもかかわらず、集合体となることで非常に多様でユニークな性質を獲得します。集団性、ネットワーク性が本質的に重要であり、要素に分解して理解することができないという点で、独特かつチャレンジングな研究対象です。
水の構造、構造化、結晶化、液液転移(polyamorphism)、ガラス化、ハイドレート形成、融解の統一的理解
水の構造化は古くて新しい問題です。最近では水の構造化は細胞内のタンパク質や膜の機能に直接関与していると考えられている一方で、分子スケールでどのような状態を構造化と呼ぶのかは未だに議論があります。
過冷却水の物性にあらわれる様々な異常の原因が、実は水の作る水素結合ネットワークの特殊な構造(多面体構造)にあることを、データマイニング的手法により明らかにしようとしています。この多面体構造は、過冷却水のみならず、水和水の構造や、氷が融解する初期過程、アモルファス氷の構造、結晶氷やメタンハイドレートの形成過程に共通して見られる、構造化水の構成単位と考えられます。また、アモルファスシリコンや、シリカガラスに構造にもこの多面体構造が普遍的に見られます。多面体構造を手掛りに、低温の水(およびネットワーク性液体)の物性に統一的な説明を与えられるのではないかと考えています。
氷の結晶構造を予測する
これまでに17種類もの氷の結晶構造が発見されましたが、驚くべきことに、この数はまだ増え続けています。近い将来、氷の種類は20に到達することでしょう。我々はシミュレーションと理論的考察をもとに、実験に先がけて新しい氷の結晶構造を予測するとともに、どのような経路でそれが作れるかを検討します。
結晶構造解析
一般に、氷の結晶構造は単位胞が大きいものが多く、複雑です。高圧で生じる氷で最も複雑な氷Vは単位胞に28分子を含みます。シミュレーションで生じる氷はさらに複雑で、例えばice Tの単位胞は72分子、ice T2は実に152分子から構成されています。実験では回折像から構造推定する手法が広く用いられていますが、このような未知の小さな結晶がシミュレーション中に形成された場合には、同じ手法が使えません。我々は実空間情報から結晶構造を特定する技術を開発しています。
クラスレートハイドレートの構造を予測する
ハイドレート化合物の結晶構造は、幾何学的には無限の多様性が考えられるのに、実際に見付かる構造は非常に限られています。この原因を探り、限界を越えて新しい結晶構造を作りだす方法を考えています。これは、新しい物性を持つシリコンクラスレート化合物やシリカクラスレート(ゼオライト)の開発にもつながります。
氷の中のプロトン移動
氷に捉えられたプロトンの運動は、他の物質では見られない独特の運動様式を持ちます。
水素結合の定義
そもそも水をネットワーク性物質と呼んで良いのか、何をもってネットワーク性とし、他の物質と区別するべきか、という問題を、情報理論の立場から検討しています。
科学グラフィックス
シミュレーションで得られる知見を、わかりやすく説明するためのCGを製作しています。これまでに、nature誌の表紙に2回、その他内外の科学雑誌、教科書、雑誌等で採用していただきました。
新しい分子模型
「見える化」ではものたりない.「さわれる化」しよう!
ワトソンとクリックがDNAの構造を発見して60年。彼らが見せた60年前の二重らせんの分子模型は、現在の分子模型とほとんど同じに見えます。分子模型の進化は終わってしまったのでしょうか。
一方で、近年3Dプリンタの普及により、いままで作れなかった形が、誰でも簡単に作れるようになりました。3Dプリンタは分子模型に何をもたらすのでしょうか。
3Dプリンタを使って、これまでになかったアイディアで新しい分子模型を開発しています。