氷Iは、2000気圧よりも低い圧力で自然に生じる唯一の結晶形です。雪の結晶と冷凍庫の氷は、見た目はかなり違いますが、分子レベルではどちらも同じ正六角形の結晶構造を持った氷Iです。
氷Iは液体よりも密度が低く、水に浮かびます。見慣れたこの性質は、実は水の特異な性質のひとつに数えられていて、水以外のほとんどの物質は結晶化すると体積が小さくなります。なお、高圧では、氷III、氷V、氷VI、氷VIIが液体と共存しますが、氷I以外の高圧氷はすべて液体よりも密度が高く、他の物質と同様に、凍ると液体に沈みます。
水を凍らせると体積が1割近く増えますが、一旦凍ってしまったあとは冷やすほど体積が小さくなります。しかし、極低温では、再び氷は冷やすほど膨張をはじめます(TYM2021, Tanaka 1998)。これも水の特異な性質のひとつです。
氷Iには、実は2種類の結晶構造があります。正六角形の結晶で知られる氷Ih(六方晶氷)のほかに、ダイヤモンドと同じ結晶構造をもつ氷Ic(立方晶氷)があります。これらは、密度は等しいのですが、結晶構造が異なり、後者のほうがわずかに不安定なので、通常は前者しか目にすることはありません。高空で雪の核が生じる時には、氷Ic構造になる場合があります。氷Icについては別記します。
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References
- (Tanaka 1998) Tanaka, H. Thermodynamic stability and negative thermal expansion of hexagonal and cubic ices. J. Chem. Phys. 108, 4887–4893 (1998).
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